本の紹介 ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義


「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」をドーナツを食べながら考えてみる

『ドーナツの穴』?しかも、『ドーナツの穴を残して食べる』? あまりにもユニークなタイトルのため、最初はいったい何を言っているのか理解できませんでした。

この本は、そんなとんでもない命題に対し、大阪大学に所属する様々な研究者が、それぞれの専門分野の知識を駆使して、まじめに解答したいわば論文集です。

美味しいドーナツのお店やレシピを紹介したグルメ本ではありません(^^;

ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義

そこで、私も「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」をドーナツを食べながら考えてみることにします。

基本情報

  • ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義
  • 編者:大阪大学ショセキカプロジェクト
  • 出版社:大阪大学出版会
  • ISBN978-4-87259-470-6
  • 1500円+税
  • 2014年2月14日 初版第1刷発行
  • サイズ:274ページ

内容をチラッと紹介

  • 穴だけ残して食べるには
  • ドーナツの穴に学ぶこと
  • 世界のドーナツコラム

「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という、冗談とも取れるテーマに多方面の研究者が真剣に取り組んで導き出した答えは?

ドーナツの穴についての議論は以前から様々な方面で戦わせられていたようです。そもそもドーナツの穴とは何か?その穴を残したまま食べることができるのか?バカらしいと言ってしまえばそれまでですが、そんな難問に対して、物理学や数学(この辺はまだ理解できるが・・・)にはじまり、心理学や経済学、はたまた歴史学(ここまでいくと、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という命題からはだいぶかけ離れてきているのではないかとい疑問も湧く)といった分野の専門家が真剣に考えているところが実に面白い。

ドーナツを穴だけ残して食べる方法

本書は「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」というテーマに対して、それぞれの専門家が論文形式でその問いに答えています。従って、硬い文章で書かれ、その中身を完全に理解するには、より多くの知識が必要になります。はっきり言って「このテーマが面白い・楽しめる」人でなければ、堅苦しい講義を受けている気分になるかもしれません。私自身も学生時代に苦労しながら論文を書いていた頃を思い出しました。

難しい中身は横に置いておいて、一つのテーマに対しての様々なアプローチの仕方を楽しむことを勧めたい。

第1部 穴だけ残して食べるには

第1章は「ドーナツを削る―工学としての切削の限界」といった、工学的アプローチでもっとも現実的で理解しやすいレポートからはじまります。ドーナツの穴ギリギリまで(皮一枚残して)削るにはどうしたらよいのか?どうでもいい事のように思えるのですが、これを突き詰めれば超先端技術の世界です。そこから次第に話が広がりを見せ、「ドーナツの穴」とは何か?というテーマに取り組んでみたり、4次元、5次元といった次元を超えた話にまで及びます。

第2部 ドーナツの穴に学ぶこと

2部に入ると、第6章「パラドクスに潜む人類の秘密―なぜ人類はこのようなことを考えてしまうのか?」というテーマからはじまります。

ここまで来ると、「ドーナツの穴を残して食べる」という命題はどこかへいってしまい、ドーナツにまつわる様々な議論へとテーマは展開していきます(^^;

ドーナツひとつで、大の大人がよくここまで真剣に、しかもより深く掘り下げられるものだな~と感心させられるほどです。

これはもはや真理の追究です。

世界のドーナツコラム

本書には各国のドーナツ事情も紹介されています。

ところ変わればドーナツも変わるで、これはこれで面白い読み物です。普段使わない頭をフル回転して疲れたところには、ドーナツの甘い糖分が必要になってくるようです。

ドーナツ談義に花を咲かせるのもいいですが、ドーナツを食べるのもいいよね。

ドーナツを食べながら考えてみる

この本を読んでいると、自分ならどう考えるか?

実際に食べてみる。

ドーナツの穴

ドーナツの穴を通して向こう側を見ると、そこには「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」が見えてくる?

穴に指を通してみたり、向こう側を覗いてみたり。

確かにそこには『穴』が存在するのだが・・・。

ひと口食べてみる。

齧られたドーナツ

まだ、穴は存在するが・・・次の瞬間!

穴の消滅

つい先ほどまで存在していたはずの穴が無くなってしまった orz

穴のカケラがそこにあるような気はするが。

はず・・・?気がする・・・?

ドーナツの穴を食べたのではなく、ドーナツそのものを食べたのに、なぜかそこには穴が存在しない?のだ。

こうなってくると、穴そのものの存在の証明をしなくてはならない。

ドーナツの穴

穴の存在を証明するために、極限を説明するための微分、空間を説明する非ユークリッド幾何学から相対性理論が必要。そして、話は宇宙物理学の世界、無の証明・・・まで。途方もない広がりを見せてきます。

もうここまで来ると頭の中はオーバーヒート。頭痛がしてきます。

「ドーナツの穴」とは何なんでしょうか?

でもひとつだけわかったことがあります。それは・・・

ドーナツは美味い!

ドーナツを作りたくなる

ドーナツ、ドーナツ、ドーナツと話が続くと、ドーナツが作りたくなってきました。

ということで・・・焼きドーナツを読書の合間に作ってみた(^^)v

焼きドーナツ

このドーナツを食べながら、また、読書に耽るのです。

さて、本を読み終わるまで何個のドーナツを食べていることだろうか?

きっとそのころには、ドーナツの油で本がベトベトに汚れていることだろう。
ドーナツを食べながら本を読むときは、その前に指に付いた油を拭き取ってからにしよう(^^;

MEMO

この本に興味を持った理由

まずはこのタイトルにやられてしまいました。「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という、二度見してしまうような本のタイトル。思わず手に取りたくなります。また、美味しそうな表紙もいいじゃないですか。

パラパラと立ち読みすると・・・ん?

中身はまるで大学の講義で使うような内容でビックリ!もっと気軽に読めるコラム雑誌のような内容を想像していました。確かに「~大学講義」とタイトルにはありますが(^^;

正直言って大学の講義はそうそう面白いものでもない。この本もきっとそうなんだろうと思いました。工学的な難しい解説が延々と続くものと想像しましたが、それは見事に裏切られ、そこには様々な分野への広がりを見せ、大変面白い読み物になっています。

「ドーナツの穴・・・」という、突拍子もないテーマでありながら、そこには「物事のとらえ方は一方向からではないよ」「見方を変えれば全く違った姿が見えてくる」そんなことを教えてくれる本です。

もしあなたなら、どのようにドーナツを穴だけ残して食べますか?

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